3/6
前へ
/34ページ
次へ
「へぇ。今度一度お願いしようかな。店の内装とか、結構マンネリ化して面白みがないから」 「有難うございます」 「お願いしたら、あんたがやってくれるのかな?」  明家の少し鋭い視線に、俺は一瞬ドキリとした。勿論そんなもの、顔には出さなかったが。 「俺は秘書で、あまり表に出ない」 「そら残念」  あっけらかんとした様子で、明家はそれ以上仕事の話はしなかった。  俺はシャワーを借りながら、これからどうしたものかと考えた。今日まで休みはある、それはいい。問題は、これほど迷惑をかけた相手にどう礼をしたものか。  考えたが、そもそもそんな事をあいつが望むのかが分からない。  熱いシャワーを浴びても俺の脳みそはまだ酔っ払いなのか、結局結論など出ず、『あいつに聞こう』という事にした。  シャワーから上がると、明家はキッチンで何かを作っていた。俺が上がると丁度できたのか、二人分のうどんが出てくる。質素で色の薄い関西風のうどんだ。 「まずは胃に入れろよ。んで、ちょっと付き合って」 「付き合うって…」 「あんたの時間を少し、俺に使ってみないかってこと。大丈夫、夕方までには帰すから」  俺は言葉を無くした。だがとりあえず、礼をするという話はこれでチャラにすることにした。  明家が何を付き合えと言うのか、正直ドキドキしていた。とんでもない事を言われるんじゃないかと、警戒していた。  だが彼が始めた事は、俺の想像の範疇にはなかった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加