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「へぇ。今度一度お願いしようかな。店の内装とか、結構マンネリ化して面白みがないから」
「有難うございます」
「お願いしたら、あんたがやってくれるのかな?」
明家の少し鋭い視線に、俺は一瞬ドキリとした。勿論そんなもの、顔には出さなかったが。
「俺は秘書で、あまり表に出ない」
「そら残念」
あっけらかんとした様子で、明家はそれ以上仕事の話はしなかった。
俺はシャワーを借りながら、これからどうしたものかと考えた。今日まで休みはある、それはいい。問題は、これほど迷惑をかけた相手にどう礼をしたものか。
考えたが、そもそもそんな事をあいつが望むのかが分からない。
熱いシャワーを浴びても俺の脳みそはまだ酔っ払いなのか、結局結論など出ず、『あいつに聞こう』という事にした。
シャワーから上がると、明家はキッチンで何かを作っていた。俺が上がると丁度できたのか、二人分のうどんが出てくる。質素で色の薄い関西風のうどんだ。
「まずは胃に入れろよ。んで、ちょっと付き合って」
「付き合うって…」
「あんたの時間を少し、俺に使ってみないかってこと。大丈夫、夕方までには帰すから」
俺は言葉を無くした。だがとりあえず、礼をするという話はこれでチャラにすることにした。
明家が何を付き合えと言うのか、正直ドキドキしていた。とんでもない事を言われるんじゃないかと、警戒していた。
だが彼が始めた事は、俺の想像の範疇にはなかった。
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