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 結局、数時間やっても明家に勝てるようにはならなかった。だが、コンピューターには勝てるようになっていた。 「ほら、やればできるじゃんか。あんた、頭いいんだな。飲み込み早くて焦るわ。もう少しやれば、俺も危ういんじゃね」  妙な満足感があったのは、確かだ。苦手だと思うと手をつけなかったのは、確かだから。 「食わず嫌いみたいなもんだったろ?」  俺は少しだけ、明家を睨み付けた。  確かに、そういう部分はあった。苦手なんだと思ったら、その分野は捨てた。捨てて問題のないものだと思っていた。だが、おそらく捨ててはいけないものだったんだと、大人になって気づかされた。  だからと言って、大人にもなって焦って拾い集めるのは、プライドが邪魔をしてできなかった。結局は自分の土俵で勝負ができるポジションに自分を持っていく方法しかとれなかった。根本的には何も、解決などしていないと分かっているのに。 「なぁ、あんたって人付き合い苦手なんじゃね?」  コントローラーを置いて、明家が言う。他人が絶対に、本人を目に前にしてはネタにしない分野の話だ。俺のプライドをまったく考慮しない、直接的な言葉で言う明家に、俺は何も言えずにいた。 「プライド高いだろ。しかも、そこを突かれるとあからさまにムッとする。高学歴でルックスいいと、そういうので遠ざかる奴多いだろ」  言い返す言葉が見つからない。明家の見透かしたような言葉は、そのまま俺の行動だ。大抵は一睨みで去っていく。  だが、こいつは何故か逃げない。適当に受け流して、何事もなかったかのように傍にいる。こんな奴は初めてだ。 「お前は、どうして傍にいる」 「俺は興味があるから」 「興味?」 「そっ、あんたに興味」  俺の思考は一瞬固まって、その後には驚きがあった。  悪い気はしない。  こんなに不機嫌な俺の相手をしてくれた奴は初めてだ。思えば昨晩のような醜態を見せた相手もいない。全部自分の中で、自分だけで処理していた。それで、これまでは良かった。  今回の事で、何か思い知った。俺は一人でいいと思っていたけれど、一人はあまりいいことじゃない。こんな時、誰に話していいか分からなかった。  いや、誰に話す事も許せなかった。偉そうに説教している俺が、部下にこんな姿を晒す事はできない。加賀地になんて言えるわけがない。高校や、大学の元友人は卒業後音信不通になっている。
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