暇を持て余した女神の戯れ

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しかし、今宵はゆっくりと釣りが出来ないかもしれない。 「出てきたらどうですか?木陰に隠れる変態さん」 俺はさっきから気配を完全に消して俺を監視する男に向かって話し掛けた。 無駄だよ。 女神の感知能力は気配ではなく存在自体を感知するため、気配を消しても意味はない。 「……これでも気配を消すのには得意なのだがね」 木陰から釣竿を背負った中年のおっさんが出てきた。 「貴女も釣りをしに来たのでしょう?」 「そうだが、君はこんな時間に何故ここに?」 「私は大体この時間に釣りをしているんですよ」 おっさんが明らかに警戒している。 おっ? 何かが餌に食らい付いたようだ。 釣竿を引き上げると糸の先端には珍しい魚がいた。 「ホシウオ!」 紺色の身体に黄色の斑点が付いた魚で、塩焼きが非常に美味しい魚である。 「……満月の夜は良く釣れるんだ。私の秘密の釣りスポットなんだが……はぁ……」 おっさんは今更帰れとも言えずに俺の隣で釣糸を垂らす。 「少し世間話をしましょうか」 「んー?」 「ヴィアン追跡依頼、それを出したのは貴方なんでしょう?ギルドマスターさん」 「……何の事かね?」 空気が明らかに変わった。 「確か“漆黒の牙”でしたっけ?彼と遊ぶのはなかなかに楽しかったですよ」 「……そうか、君が彼の依頼を妨害していた人物なんだね」
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