余裕のない男の奮闘

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俺の手はヴィアンに払い除けられてしまった。 「こ、子供じゃない!……です」 「……はい」 女の子の頭を撫でるのはイケメンにのみ許された行為で、並みくらいの俺には決して許されない行為らしい。 ゴスッ! 落ち込んでいると背後から誰かに蹴られた。 背後から蹴られればもちろんバランスを崩して前に倒れる。 前に倒れると割と至近距離にいたヴィアンを巻き込んでしまう訳で…… 結果を言おう。 俺はヴィアンを押し倒してしまった。 「ぁぅ……」 風前の灯火みたいなか弱い声を出すヴィアン。 俺の右手に柔らかい感触。 小柄な身長の割には胸が大きいな。 誰もが守ってあげたくなるような可愛さを持っているのに、何故か男の噂が皆無のヴィアン。 Fのレッテルは思いの外魅力のステータスを下げるのだろうか? 思考時間僅か1秒。 直ぐ様退いて謝ろうとした矢先に絶対零度の言葉が降り注いだ。 「ケダモノ」 その言葉を言った人物は俺の背後で仁王立ちをしている義妹。 ……ゲハァ!! 俺の精神にとんでもないダメージが入った。 そんな精神に大ダメージを受けた状態で俺の試合が間も無く始まろうとしていた。 「……」 「……」 兄妹だと言うのにお互い一言も言葉を交わさない。 片方は目に見えて苛ついているのに対して、もう片方は今にも死にそうな顔をしている。
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