第1章

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エンスージアスト ○仕事帰りの峠道・車の中(深夜)    虚ろな眼差しでハンドルを握っている高橋正明(25)。 正明(M)「人生っていうヤツは、ガキの頃をどう過ごしたかによって、将来うんざりするような日々を送ることになるかどうかが決まってしまうものらしい…。  だからこそ、子供の頃、何事も諦めるのが大好きだった俺は今、こうして無気力にハンドルを操作しながら仕事帰りの峠道を下っていた。  今日はコンビニでどんな弁当を買おうか…とか、仕事先にいた女がエロかったなぁ…とか、せっかくの休日もまたぼけーっとしてたら終わってるんだろうな…とか。  俺の毎日は流れ作業のようなものだった。朝起きて、仕事して、それが終わればコンビニの飯食って食欲を満たす。それから布団の上で横になると、すぐに一日が終わっていた。  高校を出てからの7年間を、そうやって過ごしてきた。  残りの人生も、その繰り返しで…おわっていくのだろうか…。  ガキの頃に描いた未来の自分ってのいうは、こうも情けない大人だったのだろうか。  いや、そんなはずはない。  少なくとも、今より何倍もマシな自分だったはずだ。  スーツの似合う、かっこいい大人になって、ずーっと好きだった女の子と結婚して、愛を育み、産まれたての我が子を抱いてその重さに涙する。仕事の帰り道、家族のことを考えながら、一人ほくそ笑んでいる自分。たまには昔のダチと再会し、酒を酌み交わしながら恥ずかしい過去を笑い飛ばす。  それが、少年期に思い描いていた、最低ラインの自分である。  それなのに、現実はどうだ…?  年を重ねるごとに、目つきや姿勢がだんだんと悪くなり、事あるごとに深いため息をついている自分。女子と最後に手をつないだのは中学生のとき。…しかも、相手はカーチャン。唯一の救いは、ダチがちゃんといること。片手で数えれるくらいの…な。
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