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いったい、どこで間違えたんだ?
ガキの頃に描いた将来の自分は、こんなはずじゃなかった。
かっこいい大人になって、嫁さんに子供、友達との再会…充実した毎日。
なにも手に入らないのなら、俺が生きていることに価値なんてッ!!
――って、ついさっきまで、そう思っていたんだ。
よくよく考えてみれば、おかしな話だよな。
ガキの頃に思い描いた将来の自分。それが違っていたのなら…。
現在(いま)の俺が、この先に描く未来だって違ってくる可能性もあるんじゃないのか…?
人生の転機ってヤツは案外、そこらじゅうに転がっているものなのかもしれない…」
○仕事帰りの峠道(分かれ道)の上
仕事帰りの道の途中で正明は車をとめる。すぐに、反射ベストを着用している若い男が、誘導灯を振りながら近づいてくる。
若い男「あの~すいません。実はですね、ここから先、規制がかかっていて、今通れないんですよ。ですので、迂回してもら…って、なんで泣いてるんですか!?」
自分でも気づいて、涙を拭う正明。
正明「あー、いえ、なんかね……人生行き詰ったりしたら、泣きたくなったりしません? ほら、おたくだって働いてるんだし、そういうことあるでしょう?」
若い男「ん~。自分、毎日がメチャクチャ楽しいんで、そういうのとかって、ないッスね(笑)」
正明(M)「っち…そりゃ、よかったな」
正明「で、規制かかってるって? なんかあったの?」
若い男「あ?、えとですね。実は、工事があって、はい。なので、どうしても迂回してもらわないといけないんですよね?これが」
正明「ふーん。工事…ね。聞いてないけど、そういう話」
若い男「え、はい?」
正明「いやさ、俺の職場が近くてね。この道、毎日使ってるんだけど、そういう話聞いてないからさ」
若い男「あー…はい、えと…あ、はい…い、いやー、なんといいますか…はい」
正明「この道になんかあると、俺も困るからさ。なにか悪さ企んでるなら、よそでやってくれない? いやなら、警察呼ぶけど?」
年を重ね、目つきの悪くなった正明の鋭い眼光に怯える、若い男。
若い男「まっ、待ってください! 迷惑はかけませんし、すぐに終わるので!」
正明「いや、そういう問題じゃあ…」
瞬間、正明は若者の肩越しに、向こうの道路で二つの物体が光の尾を引きながら滑走しているのを見る。
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