然るよる夜のバグハント

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その問題っていうのはつまり、報酬額の決定されていない野良バグをハントしても、カンパニーから報酬は出ないってことなんだ。 これはかなり致命的な問題だ。 魔法使ったら全てがそのまま赤字になるんだからな。 本来なら魔力の凝りを感知して分析し、バグとして出現することがほぼ確定だと判断されたら、そこでカンパニーは近くの魔術士に依頼を出すらしいんだけど……。 問題なのはここはが区界だということだ。すでにバグの形をとっているからといって、カンパニーがコイツを感知しているかどうかも定かじゃない。 ふつうだったら、バグがその形を取るころにはもうとっくにその性質や強さなんかのリサーチも終えて討伐報酬額も決定されてるんだけどな。 もちろんカンパニーだって野良バグをいつまでも放置しとかないだろうけど、すでに形成されてる区界の中に出現したバグって、カンパニー的にはどういう扱いになるんだ……? ごぉあっ―― 一つ目巨人の咆哮。 直後に砕け散る白い土塀。 巨人の振り抜いた腕が塀をぶち壊したのだと理解したのは反射的に飛び退いてからだった。 ……やっぱ待ってられねえよな。 つか、やっべえ。 吼えたから反射的に逃げれたけど、ぼやっとしてたら飛んで来る破片に巻き込まれてるとこだ。 きゃあきゃあ悲鳴こそ上がっていたが、オレと同時に飛び退いたみんなもどうやら無事なようだ。 「いきなり来るとはヒキョーでつお!!」 舞い散る土塀の残骸の向こうに全身を現したキュクロープスを見据えながら、ウメノが怒鳴る。 まあバグが攻撃の前に断りを入れるはずもねえんだけどな。
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