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「『その身隠せし彩尽きぬ王 遊芸もちて吾に悦楽を
――アイム フェアリー!』
いっちゃって!!」
いつもは消え入りそうなばかりのさくらの声も、魔式ダウンロードの時ばかりは陶器の風鈴が鳴るように響く。
異界から送り込まれてくるのは、まるでふざけてでもいるように波打つ魔式。
そして文字列が霧散するとともに
――へけけ
薄気味の悪い笑い声。
この魔法に限ってはエフェクトらしいエフェクトは見られない。
でも、視えない何者かが、この場に現れたことだけは感じられる。
この「妖精の悪戯」は使いやすい魔法というワケではない。
ぶっちゃけるとすごく使いづらい。
でもサクラにこの魔法を使うように言ったのには、もちろん狙いがある。
魔法の効果としては、特定の空間に入った物がそこからランダムな方向と力加減で出される、というものなんだけど……
このランダムさが曲者で、ふわっと入った物が弾丸のようなスピードで飛び出すこともあり、しかもそれが術者自身にむかうことだってあり得る。
普通ならこんな危なっかしい魔法は使うやつなんていないはずなんだけど、実際にはそれなりに需要があったりする。
と、いうのも実はこれ、とことんまで術者との相性が効果に影響を及ぼす魔法なんだ。
つまり、この魔法に懐かれている者が使えば、ほとんど術者の不利に働くことはないんだ。
そしてサクラはこの魔法に懐かれてる。
それも、とてもすごく懐かれてる。
もちろん完全に制御できるというワケじゃないんだが、妖精は少なくともサクラに向かう危機だけは必ず取り除こうとする。
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