故に、僕は恋に殺された敗残兵だ。

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 混乱状態、指令系統が完全に麻痺して、僕の不良な視界には、ぐるぐる回るキレイなお星さまが見えます。 「……そうですね、今日はとても暑いです、もうすぐ夏ですから」  その音声は臨戦態勢。実戦経験が圧倒的に不足している僕なんかが攻略できそうな突破口は見当たらない。  ………………お、お? でも、それでも、確実に警戒態勢ではあるけど、会話が出来たぞ? 僕と彼女との通信回線は正常に作動していたのか? 彼女と僕は月とすっぽんの関係でしかないはずだが、も、もしかしたら、彼女、デレるのか?  ……って、いやいやいやいや、待て待て、待てって。何を僕なんかが期待しているんだ。傍目から見れば、僕はただの挙動不審者じゃないか。  今まで、女の人と関わったことすらない、いや、どうせ仲良くなるなんて無理だと諦めて関わろうとしなかったような、何の魅力も取り柄もないチキン野郎の僕だぞ? 今回だって、どうせ無理に決まってる。そんなのは、作戦を立てる前から分かりきっていたことだ。  そうだ、だから、これは撤退戦だ。僕はこれ以上の被害拡大を防ぐんだ。主に、僕の心の損害を。
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