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「しばらく二人共戻ってこなさそうですし。座りませんか?」
「だな」
洋子ちゃんが椅子に座ったのを確認して、自分は座らず自販機の前に立つ。
「飲み物、何がいい?」
「え? あぁ、いいですいいですよ。自分で買います」
ガコン、と自販機から出て来る二本のペットボトル。
「ごめん、もう買っちゃった。ウーロン茶と紅茶、どっちがいい?」
「えと、じゃあ紅茶で」
手渡すと、ありがとうございます、と洋子ちゃんが可愛く微笑んでくれる。
本当はこんな強引に押し付けるんじゃなく、何か上手い事でも言ってスマートに渡したかったんだけど。
咄嗟に良いセリフが思いつかなかった。
シザンサスでは風見さんに昼食を奢る事を完全に断られたから、それから見れば今回は無理やりにでも渡せただけ、一歩成長したと思いたい。
「……でも悔しいです。完全に手玉に取られちゃいました。完敗です」
「そうかな? 途中まで洋子ちゃんの方が完全にリードしてたし、かなり惜しかった様に見えたけど」
「いえいえ、全然ですよ。だって風見さんの使ってたあの武器、多分自分の物じゃないです」
「わかるんだ」
「わかりますよー。こっちは全力で挑んだのに、風見さんは使い慣れない武器を、変な組み合わせで持ち込んで、それで私に勝っちゃったんですから。やっぱり完敗です」
……その使い慣れない武器の変な組み合わせ、実は俺セレクトな事、黙っていよう。
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