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「本当に何も知らないのってなんか不安だよ? 足元がよく見えない感じで」
「でも、夏姫ちゃんは、まだ見ぬ『パパ』を夢見てないかな? 実際はそんな人じゃないかもしれないよ?」
「それでも、知りたいよ。生きてるか死んでるかくらいは。もしかしたら、今はもう死んでるかもしれないわけでしょ? そういうのも知らないって言うのはどうなの?」
安藤さんは私の指をかじるのをやめた。
「おなかすいてるでしょ? 何か作ろう。おいで」
きっと私は拗ねた顔をしているんだろう。
そういう時安藤さんは私に、何か温かいものとか、何かおいしいものを差し出す。
子どもじゃないんだからと思うけど、悔しいことに、食べたり飲んだりした後の私の唇の端は上がってしまう。
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