序章 三つ子の

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 彼が弟の手を引いて家に帰ると、顔色の良くなった母親が体を起こし彼らを見ると微笑みました。  兄弟は顔を見合わせて喜びました。  その様子を悪魔の手鏡で見た真ん中の兄弟は安堵の息を漏らしました。  あの悪魔は待ってくれていたのです。 『安心したか?』  悪魔は問います。  彼は笑顔で頷きました。  怒っていると思っていた悪魔も優しく彼はすっかり良い気分になっています。 『そうか。…だが、お前は約束を守れなかった』  悪魔は口角を上げます。 『食ってやろうと思っていたが、気が変わった』  びっくりしている彼の鼻先をちょんと指で突っつき悪魔はクスクスと笑い出しました。  彼は逃げたかったのですが、体が言う事を聞きません。まるで何かに縛られているように体が動かなかったのです。
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