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けれど優しいおっちゃんは、オマケだよと言って、払った金額分を毎回保証してくれる。
僕だけではなく、どの子供にもそう。
それが嬉しくて、僕らはおっちゃんの元に集まる。
紙芝居なんてたまにしかやらないし、駄菓子のほとんどはおっちゃんの手作りの水飴や桜大根や杏飴で、あまり美味しくもないのに。
だいたいの親はおっちゃんの商売を容認していたけれど、一部、快く思っていない親もいた。
「不衛生だ」
「あの人は多摩川の河川敷に住んでいる浮浪者だ」
「見ず知らずの他人が作った物が、子供の口に入るなんて」
なんて、ヒソヒソと陰口を叩いたりする人もいた。
それがまことしやかに親の間に浸透していった頃、事件は起きた。
同じ団地に住む春樹の親は、すごく神経質な事で有名だった。
だからもちろん、買い食いなんて許されていない。
ある日、春樹は親の目を盗んで、紙芝居のおっちゃんの所にやってきた。
珍しい友達が現れたのが楽しくて嬉しくて、僕らは凄くはしゃいだのを憶えている。
この時に食べたおっちゃんの手作り駄菓子の味は、なぜかとても美味しかった。
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