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「くそっ!守りきれない!」
「あああぁぁああぁぁああああ!!腕が!!俺の腕がああぁ!」
「おい!しっかりしろ!おい!おい!返事しろよぉ!」
「いやだ!やだやだやだああぁああぁぁあ!!」
村を守るはずだった兵士達の断末魔が響き渡る。
村の中はさらに酷い有様で、老若男女が無差別にぶちまけられていた。
すでに叫ぶ気力も無くただただ呻くだけの肉塊と、それを覆う少量のボロ布。
両腕と片足が切断されて奇妙なヘビのようにのたうつ幼児。
真っ二つにされて内臓と、消化器系のそれから出た排泄物と共に街道に転がる少女。
幾百もの足に潰されてのし広がった老爺。
人型をした炭と家屋の残骸と肉片と、悲鳴と絶望と怨嗟。
そしてそれらを差別無く蹂躙する、魔物。
大きな狼のようなもの。ゴブリン、豚の頭をしたオーク。
彼らは、血に塗れていた。
一匹のオークが女の身体__首から上は無い__を片腕に抱えて村の外へのしのしと歩いてゆく。
恐らく、性欲と食欲のための非常食にでもするのだろう。
それが合図だったか他の魔物もそれに続き、村から離脱する。
後にはただただ残骸ばかり。
魔王という存在がこの世に現れて何千年だろうか。
人間と魔王。両者の滅ぼしあいは未だ続く。
人間は滅びない。魔王は滅んでも、数十年の平和が訪れるだけであった。
そんな平和でない時の、日常風景。
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