第1話 始まりの勇者の始まり

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「くそっ!守りきれない!」 「あああぁぁああぁぁああああ!!腕が!!俺の腕がああぁ!」 「おい!しっかりしろ!おい!おい!返事しろよぉ!」 「いやだ!やだやだやだああぁああぁぁあ!!」 村を守るはずだった兵士達の断末魔が響き渡る。 村の中はさらに酷い有様で、老若男女が無差別にぶちまけられていた。 すでに叫ぶ気力も無くただただ呻くだけの肉塊と、それを覆う少量のボロ布。 両腕と片足が切断されて奇妙なヘビのようにのたうつ幼児。 真っ二つにされて内臓と、消化器系のそれから出た排泄物と共に街道に転がる少女。 幾百もの足に潰されてのし広がった老爺。 人型をした炭と家屋の残骸と肉片と、悲鳴と絶望と怨嗟。 そしてそれらを差別無く蹂躙する、魔物。 大きな狼のようなもの。ゴブリン、豚の頭をしたオーク。 彼らは、血に塗れていた。 一匹のオークが女の身体__首から上は無い__を片腕に抱えて村の外へのしのしと歩いてゆく。 恐らく、性欲と食欲のための非常食にでもするのだろう。 それが合図だったか他の魔物もそれに続き、村から離脱する。 後にはただただ残骸ばかり。 魔王という存在がこの世に現れて何千年だろうか。 人間と魔王。両者の滅ぼしあいは未だ続く。 人間は滅びない。魔王は滅んでも、数十年の平和が訪れるだけであった。 そんな平和でない時の、日常風景。
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