1人が本棚に入れています
本棚に追加
そこは猛暑で、戦場だった。
長い帽子を被った男1「おい、なにやってんだノロマ!」
長い帽子を被った男2「くそっ!間に合わねえぞ!」
長い帽子を被った男3「火力が足りねえ!」
怒号と熱波が混じり合い、混沌とした場所。
そこが少年___勇者の職場だった。
長い帽子の男2「くそっ!くそっ!この……切れやがれッ!」
大男が包丁を大きな肉塊に叩きつけている。
長い帽子の男3「うわぁぁぁ!?」
若い男がフライパンから火柱を立てて狼狽える。
一際長い帽子の男「おい、坊主!キャベツはまだか!」
立派なヒゲの男が命令を下すと、
勇者「はいっ!今ここに!」
勇者が人と調理台の間を抜けて、野菜が詰まった箱を抱えて走ってくる。
練兵場よりも過酷。
王の側付きの近衛騎士も恐れ怯むコック達。
包丁の叩きつけられる音と熱気と怒号が満たすこの世の混沌。
ウェスタロッパ王城調理場。
それを宮廷の者はこう呼ぶ。
「戦場」と。
そして、その調理場手伝い。
それが少年の仕事である。
料理人1「おい……空が青いぜ。」
料理人2「ははっ…ホントだ…キレーな夕焼けだぁ…」
料理人が2人、調理場の壁に座り込んでレンガの天井に何事か呟いている。
一際長い帽子の男(コック長)「ふぃーっ昼の仕事はコレで終わりっと……おい坊主、夕飯の材料冷蔵庫に詰めたか?」
勇者「ええ、終わりました」
コック長「うし、じゃあ今日の給金だ。もう帰って良いぞ」
勇者「ありがとうございます。それじゃ、また明日も」
コック長「おう!頑張ってこいよ」
調理場を出ると勇者は、外には出ずに城内を移動する。
~練兵場~
東洋風の顔の兵士「お、来たな」
勇者「今日もよろしく、隊長」
二人が木刀を手にする。
それは、王国軍の制式長剣を模した物だ。
東洋風の顔の兵士(隊長)「よっしじゃあ始めるとすっか……礼ッ!」
ザッ!
二人がお互いに頭を下げる。
そして次に両者の視線が交わったその刹那。
ガンッ!
重く硬いカシアンの木で作られた木刀が隊長に襲いかかり、隊長がそれを受ける。
最初のコメントを投稿しよう!