*王子は2度目の恋をする

35/143
3584人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ
「…あ、でもそれはさすがに経費オーバーですかね?」 ハハッと笑った彼女の手を、思わず掴んでしまった。 ちょっとビクッとした彼女の瞳を見つめながら、力を込めて言う。 「じゃあ4人で行きましょう。勇斗くんと彼の彼女、そして私とあなたです。」 「…そんな…。」 驚いた表情の彼女の手を、更に強く握った。 「それだったら、勇斗くんも気兼ねなく楽しめるし、私も気兼ねなくあなたと楽しめる。あなたの安全も配慮して、あなた自身も楽しめるように私がします。」 「……。」 …もう一押し。 弟思いの優しい彼女なら、絶対に断れないはず。 どんな卑怯な手を使ったって構わない。 …彼女がコチラを向いてくれるのなら。 「私と行く事であなたを気疲れさせてしまうかもしれませんが、それでも勇斗くんの弾んだ声を聞けるならいいと思いませんか?」 「……。」 動揺して揺れた彼女の瞳は、ゆっくりと瞬きをしてから伏せられた。 「……。…本当に…、よろしいのでしょうか…?そこまでして下さって…。」 「私がそうしたいのです。」 咄嗟に彼女の手を両手で握ってしまった。 …ほんの少しでもいい。 俺の気持ちが伝わればいいのに。
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!