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「…あ、でもそれはさすがに経費オーバーですかね?」
ハハッと笑った彼女の手を、思わず掴んでしまった。
ちょっとビクッとした彼女の瞳を見つめながら、力を込めて言う。
「じゃあ4人で行きましょう。勇斗くんと彼の彼女、そして私とあなたです。」
「…そんな…。」
驚いた表情の彼女の手を、更に強く握った。
「それだったら、勇斗くんも気兼ねなく楽しめるし、私も気兼ねなくあなたと楽しめる。あなたの安全も配慮して、あなた自身も楽しめるように私がします。」
「……。」
…もう一押し。
弟思いの優しい彼女なら、絶対に断れないはず。
どんな卑怯な手を使ったって構わない。
…彼女がコチラを向いてくれるのなら。
「私と行く事であなたを気疲れさせてしまうかもしれませんが、それでも勇斗くんの弾んだ声を聞けるならいいと思いませんか?」
「……。」
動揺して揺れた彼女の瞳は、ゆっくりと瞬きをしてから伏せられた。
「……。…本当に…、よろしいのでしょうか…?そこまでして下さって…。」
「私がそうしたいのです。」
咄嗟に彼女の手を両手で握ってしまった。
…ほんの少しでもいい。
俺の気持ちが伝わればいいのに。
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