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「…どちらの映画も、まだ目が見える頃、一度観たっきりなんです。」
「……。」
「…もっと、ちゃんと観ておけばよかった。」
「……。…そうか。」
思わず視線を彼女の口元から外して、瞳を伏せてしまった。
「…俺も、もっとちゃんと観ておけばよかったな。…イヤ、これから観るよ。ちゃんと観る。」
「…フフッ。」
「もしだったらご一緒に?…一度観てるなら、音だけでも分かるだろうし…」
「大丈夫です。」
…まただ。
あと一歩の所でシャットアウトされる。
「…では他に、あなたが興味のある事を教えて下さい。これから行きたい場所でも何でもいい。…あなたへの報酬もきちんとしたいんです。」
「……。」
…暗に、『貴女自身に興味があります、好意を持ってます』と伝えた。
彼女は戸惑った様子を見せ、しばらく考え込んでから、やがてゆっくりと言葉を落とした。
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