*王子は2度目の恋をする

34/143
3585人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ
「…それなら、USJがいいです。」 「USJ?」 余りの思いがけない言葉に、即座にオウム返ししてしまった。 …マサカ、テーマパークとは。 彼女はゆっくり、ゆっくりと丁寧に告げた。 「…勇斗が、…勇斗が今一番行きたがってる所なんです。初めてだから…。私と一緒だと、どうしてもどこへ行っても、私に気を遣ってしまう。私のせいで、彼女ともどこにも行ってないみたいだし…。勇斗の年代なら、もっときっと楽しんだっていいはず…。」 「…それは…。」 『あなたも同じでしょう?』とは言えなかった。そしてやや声が掠れた。 姉弟2人だけで生きてきた姉が弟を思いやる気持ち、…それは俺が簡単に口出ししていい事じゃない。 「…もし、この事業に関わる事で、私が何か報酬を頂けるのであれば、…勇斗と彼女をUSJに連れて行ってあげてもらえないでしょうか?…あの子、あれでハリーポッターとか好きなんです。」 「……。」 思わず目の奥が熱くなった。 姉は姉で、『自分よりも弟』。 弟は弟で、『自分よりも姉』。 …どうしてこんなに世の中は理不尽なんだろう。 こんなにも健気に生きてる彼女達の一方で、俺のように恵まれた暮らしをしてる人間がいる。
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!