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俺の心とは裏腹な、青空が眩しく感じるくらいの晴天。冷たい風も吹いておらず、思いっきり散歩日和だ。
……なのに足が重い。
「あのチャラい奴、きっと来てるに違いない。諦め悪そうな顔してたしな」
そういう俺も、十二分に諦めが悪い男である。
ぬいぐるみのように愛らしい彼女を、みすみす簡単に、さぁどうぞと渡すわけにはいかない。
俺の股間じゃなかった、沽券にかけて阻止してみせる! 奮い立て俺。
昔は(ちょっと前ね)近所で恐れられていた、存在だったじゃないか。上には上がいて、あっという間の天下だったけど、それでも頂点にいたのだ。
「あの頃の自分を思い出せ。まだいける、やれるんだ!」
歩きながら、念仏のように唱える。思い込みとは恐ろしい。だんだん、やれるような気がしてきた。
無意味な自信がつくと勝手ながら、恋の行方も良い方に話がちゃっちゃと進む。本当にお調子者だと笑われそうだけど、それでもいいの。頭の中は、既に春めいているんだから。
「俺がこてんぱんに、あのチャラい奴をやっつけちゃって、その姿を見て素敵ってなったら、どうしよう……」
そんでもって私のこと、好きにしちゃっていいですよってなって、そこから勢いで、ガブーッと首を噛んじゃって、あっはんうっふんで、腰をガクガクブルブルって……
怒涛の勢いで、俺の妄想が暴走する。
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