前章 ガブリエル

4/5
前へ
/8ページ
次へ
  † † †  ……僕達が体験したことは、きっと大きな目で見たら、何てことは無い、この世界では良くあることなのだろう。  結果としては、『天使を返り討ちにした』。ただそれだけのこと。  だけど、僕達個人ではそれを知り得ることはできない。僕達は望んだ身を投じたけれど、あくまで一個人だから。  ただの一個人が、物語を把握することはできない。  この事件において、一個人でいながらにすべてを知り得るのは、きっと彼女のみなのだろう。  人間好きの戦争屋。フレニア・プリムヴェール。  山羊の執事と共に、天使を撃退した張本人。  ああ、申し遅れた、僕の名前はシン。シン=アリハラ。  セルバンテス学園に通う一般的な学生。  この世界では比較的少ない種族の人間で、普通に生きていたら、きっと今回の事件を知らぬままに過ごしていただろう。  それほどまでに、今回の事件は存在感が無かった。  強いていえば、ゴルデネの空に希少な天使種()が観測された程度。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加