前章 ガブリエル

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 神罰をも穿つ業火が、殺意を粉砕した。  然(しか)し、業火は業火にあって業火に非ず。  路地(せかい)を埋め尽くす零度の悪意を粉砕した焔は、既にその姿を霧散させている。  やがて暗闇から現れたモノは、天使。  青白く発光する無色の翼と、蝋燭じみた肌の白さを持ち、仮面のように無表情を張り付けた、氷の天使。  歩を進める度に、歩んだ道は凍り付き、先ほど粉砕した悪意は、再び浸食を始めようとしていた。  少女は再び、しかしより強く、抱いた書物に力を込める。 「――汝、神罰に抗うか」  あらゆる不義を、不正を、不満を許さない、冷徹なる声で天使は言う。 「――汝、罰則を受け入れぬか」  天使は再び告げる。  冷酷に満ちる天使に対し、少女は――  
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