第一章 少女A

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   フレニア・プリムヴェールという少女は、最後の最後まで本当にいけ好かない少女だったということを、僕は覚えている。  ひねくれ者であまのじゃく。自分勝手な癖に変に悟ったような空気をしていて、人間が好きな「戦争屋」。  いつも隣に背の高い軍人のような山羊の執事を連れていて、その軍人におちょくられてはむっとしていた少女。  いけ好かない少女。  彼女はなんといっても魔術師だった。人間に次いで珍しいものの一つである、魔術師。  本当か嘘か問いただそうものならば、いつも愉快そうに笑って、 「まあ、何れ解るようになるよ。きっと何れ、いつかね」  なんて言って煙に巻いてしまわれていたから、もしかしたらただの妄想癖のある少女だったのかもしれない。  ……だが、彼女のいない今、僕がことの真相に辿り着くことはできない。  いつの間にか消え失せてしまった彼女は、一体全体どうしてしまったのか。  いけ好かない幼女と山羊の執事。  フレニア・プリムヴェールとヴァインド・ウェルフェアのことをたまに想い出しながら、僕は日常を過ごしている。
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