第一章 少女A

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   あれは、アルテミシアの暦で夏に差し掛かるころ。太陽の周期の関係か、それとも大都市故の人口からか蒸せる暑さが支配する月に起こった事件だった。  事件といってもそんな大きなものではなく、ほんのちょっとした些細な出来事。  数日もすれば忘れられてしまうような、小さな事件だった。  ――僕の親友が、死亡した。  そんな、小さな事件。  数日もすれば僕の周りの人々は話題にもしなくなったが、幾日たとうと僕は忘れることなどできなかった。  つまりは引きずっていたのだ。  ずるずる、ずるずる、と。それは数週間経ったところで、半分廃人のようになってしまっていた気がする。  そんな、ある日である。  彼女が、フレニアと名乗る少女と、その世話役の山羊の獣人がやって来たのは。
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