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真弓は手土産を渡すと、ちょっと躊躇しながら部屋に入り、
そうして辺りを見回してから、
「高そうな部屋じゃねぇ」
と言って唸った。
志津子は、昨日会った時から、
真弓に何か引っ掛かるものを感じていた。
その言葉使いもそうだったし……。
志津子は横目にして、再度真弓を見入った。
「あなた……絵一さんの……」
振り向いた真弓は、
突然、志津子の口から絵一と言う名前が出てきて、
ぬぅっと睨むようにしてから言った。
「あたしは、絵一の兄弟でも親戚の者でもねぇがょ。
あたしは……」
「ん、あたしは?
絵一さんのいい人……なのですか?」
真弓は、呑むつもりが呑まれたような気がした。
「ぇっ まぁあそうじゃ」
それでもって真弓は、
志津子のたった半年間の親しみに比べて、
自分は八年掛かっても成し得なかった親しみに、
……ぐぐっと唇を噛み締めるのだった。
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