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「……って、え?」
「ふふっ。」
その時になってようやく見た彼の顔に、大きく目を見開く。
だってその柔らかい癖っ毛は…
「かっ、楓!?」
「せいかーいっ。へへっ。」
その笑顔に、笑い方に、身体中の血が一気に騒ぎ出した。
だって、それは、私の大好きだった……
「楓だーー!!」
「わーい!柚子、久しぶり!」
背格好は、今日学校で見た紫苑と同じ。
でも眼鏡はかけてなくて、色素の薄い癖っ毛にはワックスがついているらしく、オシャレにアレンジされている。
スニーカーの上は、ズボンをくるぶしでまくっていて、その上はカラフルなパーカー。
ぜんぜん紫苑と雰囲気が違う。
わあっ
楓だ
楓だ
楓だーーー!!
私の、初恋の人。
「ってもう、ナンパかと思ったじゃん。」
「へへっ、柚子があまりにも可愛いからナンパされてると思った?」
「ちょっと!」
からかうような口調に、バシッと腕をたたくと、楽しそうにいてっとよける。
「うそうそ。本当にかわいーよ、柚子。」
「……っ」
不意打ちで、ぶわっと顔が熱くなった。
だってこの年の男子に、面と向かって可愛いなんて言われること、ないし。
ましてや、こんなにカッコ良くなった初恋の人に…
「かっ、楓は、なんか…チャラいね。」
「えーー!チャラくねーよう。オシャレって言ってよ。」
私の照れ隠しの言葉に、心底不満そうに唇を尖らせる。
ああ、この感じ、懐かしい。
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