第1章

10/18
前へ
/226ページ
次へ
「……って、え?」 「ふふっ。」 その時になってようやく見た彼の顔に、大きく目を見開く。 だってその柔らかい癖っ毛は… 「かっ、楓!?」 「せいかーいっ。へへっ。」 その笑顔に、笑い方に、身体中の血が一気に騒ぎ出した。 だって、それは、私の大好きだった…… 「楓だーー!!」 「わーい!柚子、久しぶり!」 背格好は、今日学校で見た紫苑と同じ。 でも眼鏡はかけてなくて、色素の薄い癖っ毛にはワックスがついているらしく、オシャレにアレンジされている。 スニーカーの上は、ズボンをくるぶしでまくっていて、その上はカラフルなパーカー。 ぜんぜん紫苑と雰囲気が違う。 わあっ 楓だ 楓だ 楓だーーー!! 私の、初恋の人。 「ってもう、ナンパかと思ったじゃん。」 「へへっ、柚子があまりにも可愛いからナンパされてると思った?」 「ちょっと!」 からかうような口調に、バシッと腕をたたくと、楽しそうにいてっとよける。 「うそうそ。本当にかわいーよ、柚子。」 「……っ」 不意打ちで、ぶわっと顔が熱くなった。 だってこの年の男子に、面と向かって可愛いなんて言われること、ないし。 ましてや、こんなにカッコ良くなった初恋の人に… 「かっ、楓は、なんか…チャラいね。」 「えーー!チャラくねーよう。オシャレって言ってよ。」 私の照れ隠しの言葉に、心底不満そうに唇を尖らせる。 ああ、この感じ、懐かしい。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加