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「私は納得してない!
なんで幼馴染の紫苑と仲良くしちゃいけないの?話しかけちゃいけないの?
本当は仲いいのに、なんで仲良くないフリしなきゃいけないの?私にはそんなこと、できない。納得できない。」
今まで溜まっていたものが、一気に溢れ出す。
今まで締め付けられていた紐が解き放たれたように、我慢していた思いが次々私の口をついて出てくる。
ちゃんと伝えたい。伝わって欲しい。
「…理由なんてないよ。ただ迷惑だって―」
「なんで?なんで迷惑なの?
私のことが嫌いなの?
言いたいことがあるんなら、はっきり言えば?」
「……っ」
逃がさないように、じっと紫苑の瞳を睨むように見つめる。
「はっきり言えるような筋の通った正論ならね。
はっきり言えないくせにイチャモンつけてるぐらいなら時間の無駄だと思うけど。」
やっと見れた。
紫苑の、表情が動くところ。
今度こそ、紫苑の無機質な瞳が揺らいだのが、わかった。
昔、紫苑がいじめられてる私を庇って言ってくれた言葉。そのままそっくり。
驚いたように見開かれる紫苑の瞳と、対照的に
満足げに爛々と光る私の瞳。
不思議ともう、怖くなかった。
紫苑の心を、動かせた実感があった。
「…好きにすれば?」
諦めたようにそうつぶやいて、紫苑はさっと背を向けた。
廊下を遠ざかっていくその姿を見ながら、こらえきれなくなった笑顔が私の顔面を侵食し出す。
やった…!
紫苑に、勝った!
好きにするもん。好きなだけ、紫苑と仲良くするもん。
「ふふふっ」
嬉しくて、思わず声が漏れた。
「さ、部活部活!」
上機嫌で、あえてそんなことを口ずさみながら教室へと戻った。
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