第1章

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初恋の人を、見つけた。 入学式。 今日から通う高校。 式から帰って来て、誰もがそわそわと自分の席で辺りを伺っている。 隣の席で、すぐに仲良くなった沙也香ちゃんと話しながら、私の目の端が彼を捉えた。 初恋の人の名前は、安藤楓(あんどう かえで)。 最後に会った小学生の時より、ずっと背が伸びて、見たこともないような眼鏡をかけている。 輪郭だってシュッとして、かっこ良くなってる。 でも、変わらずに色素の薄く、少し癖っ毛の柔らかい髪。 大好きだった目元。 間違いない。 ーーー7年ぶりの、楓だ。 担任の先生の挨拶が終わるのがもどかしい。 先生が一人一人点呼する。 一番端っこに座った楓が「安藤」と呼ばれ、聞いたことのない声で、「はい。」と返事をした。 声変わりしてるーー そう思って1人、ひっそり微笑んだ。 クラスのみんなの名前を聞きながら覚えようとなんて出来なかった。 ただ、はやく楓に話しかけたかった。 点呼が終わるのをはやる気持ちでじっと待った。 最後から2番目に「矢吹」と呼ばれて、空返事をした。
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