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「楓っ!」
ホームルームが終わり、それぞれ帰り支度を始める中。
真っ先に教室を出ようとした背中に、迷わず声をかけた。
立ち止まる背中。
わ、本当に背が高くなってる。
私の頭二つくらい上だ。
すっかり制服のブレザーが似合っている、普通の高校生。
その背中は私の声に動きを止め、その場でゆっくり振り返った。
眼鏡の奥の色素の薄い目が、私を捉えた。
ドキドキドキ
なにも考えず、思わず声をかけてしまったけど。
よく考えたら7年ぶりって。
もしかして私のこと、忘れてるかも?
いやいやいや、でも私には一発で楓のこと分かったし。
あ、でも男の子だから?
女の子の方が変わるっていうし…
でも化粧だってしてないし、髪型だってずっとこの長さだし。
顔も変わらないってよく言われるし。
わからないわけないよね。
一気に色んなことが頭を巡る中、ゆっくりと楓が口を開いた。
「ーー俺、紫苑だけど。
久しぶり。矢吹さん。」
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