第1章

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一瞬ぽかんと口を開けた。 次の瞬間、あははっと吹き出した。 やってしまった、と思ったけど、笑うくらいしか対処方法が思いつかなかった。 「なんだ紫苑か!久しぶりに見たから間違えちゃったよ。」 紫苑は特に怒るでも呆れるでもなく、ただ冷めた目で私を見下ろしていた。 ああ、そうだよ。 なんで間違えたんだろ、私。 これは、紫苑の目だ。 安藤紫苑(あんどう しおん)。 楓の双子の弟。 仲が良くなかったわけじゃない。 小さい頃は、楓と紫苑と三人でよく遊んだ。 家が近所だったから、私が2人の家に遊びに行くこともしょっちゅうだった。 それでも、初めに紫苑の事を思い出せなかったのは、楓が私にとって、特別な人だから。 初恋の人。 でもなぜか楓の事だって、ずっと忘れていた。 今日紫苑を見て突然思い出したくらいだもん。 その彼の弟の事まで思い出せなかったって、不思議じゃない。 「げ、元気にしてた?」 「うん。」 「そっか。」 会話が続かない…。 「か…楓は?違うクラス?」 さっき間違えてしまった罰の悪さから、恐る恐る尋ねる。 「…あいつは、この学校じゃない。」 「あ…、そうなんだ。」 自分でも分かる、明らかに落胆した声。
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