第1章

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「じゃ。」 「あっ!」 床に視線を落としていた私の前で、立ち去ろうとする紫苑に、思わず声を上げた。 紫苑が無表情で振り返る。 「帰るの?」 「うん。」 「部活は?見てかないの?」 これからの時間。 どの部活も新入生向けに体験入部を行っている。 私もこれから気になる部活を見に行こうとしていたところだった。 「部活は、入らない。」 「そっか…。」 そう言いつつ、たしかに紫苑が何かの部活に入るとしても、どんな部活に入るのか想像がつかなかった。 体育会系ってよりは、文化系? でも音楽系ではないだろうし… うーーん。 文学部とか? って、この学校、文学部なんてあったっけ。 「じゃあね。」 そうこうしているうちに、今度こそ紫苑は前を向いて行ってしまった。 「バイバーイ。」 私の声だけが、虚しく廊下に響く。 なんかイマイチペースがつかめない…。私たち、こんなだったっけ? まあ、クラスメートだし。 明日からも変わらず会えるんだもんね。 ぼちぼち慣れて行けばいっか。 そう思って、私はまた自分の席へと戻った。
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