第1章

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…ん。ていうか、 「矢吹さん」て。 何その、よそよそしさ。 昔は「柚子」って呼んでたくせに。急に大人ぶっちゃってさ。 まぁ、実際見た目はかなり大人だけど。 昔から綺麗な顔立ちだったけど、成長したら、普通に美形…。 …なんか負けた気分。 ・・・ 小学校からの帰り道。 方向が同じ私達は、三人で仲良く並んで集団下校。 「柚子は、世界一可愛いよ!」 「えへへっ、本当?楓。」 「ほんとだよぉ!な、紫苑!」 「……。何言ってんの。世界一な訳ないじゃん。アメリカ人とかイギリス人とかの方が、絶対美人じゃん。」 「何言ってんだよー。僕にとっては柚子が一番なの!柚子、気にしなくていいからね!」 「…うん。」 ・・・ なんか嫌なこと思い出した…。 …そうだよ、紫苑は昔っからこういう奴だった。 優しい楓とは正反対。 いつも意地悪ばっかり言われたな。 ふぅ…。 にしても、どうしてこんなこと、今まですっかり忘れてたんだろう。 多分思い出すの、小学校以来だよな…。 あんなにいつも一緒にいたのに。 いつの間にか電車が地元の最寄り駅についていた。混み合う車内からなんとか脱出する。
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