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ネバルの顔にただならぬ色が浮かぶのとは裏腹に、アーサーの弁は饒舌さを増しているようにさえ思えた。空はただ緑を湛えて見守っている。それが“青色”だという話など、それだけで異様なことであり、彼等の異常性を物語っていた。
『我々は“例の件”について、君のした事を責めているのでは無い。むしろそれは、この論題に繋がる……“青い空”と、“鴉”の伝説だ』
「伝説だと?」
苦い顔を作ってネバルは聞き返す。対するアーサーの言葉は確固としており、語調には一切のぶれがない。
『各地に伝わる民間伝承というのはごまんとあるが、その中の幾つかに興味深い共通点がある。“青い空に鴉が飛ぶ”……それはいずれも、終末の日を予言するかのように描かれている。サンドラルの教典に於いても、ピーター・グライムの民俗童話でもそうだ。マイナーな所では、ホーリー・ビブライカにも似たような話がある』
「何だそれは……からかっているのか?」
『そう言う訳ではない。私はそうした伝承を研究した結果、全力で探しているのだ。終末の日に燦然と羽ばたく、真の“鴉”を。そして君も、満更では無い筈だ』
如何にも興味が無い風にネバルは返したが、その声には確かに、平生では有り得ない震えが感じられた。そして見透かした風に、アーサーは持論に対し一言を付け加える。まるで心臓を突き刺されたような動揺が、ネバルに走った。
『さて、ここまで話した理由はただ一つ……ネバル、我々の仲間になって欲しい。この動乱の世を生き残るのは、私と、私が選んだ“鴉”達だ。巨大勢力が作り出す情勢に流され、羽ばたく事無く地に堕ちるというのは、私の望む所ではない』
一通りの固い挨拶を述べた後、遂にアーサーは本題を口にした。彼のスタンスは変わらず、己の理想とするところを真正面からネバルにぶつけ続ける。夢物語か何かと混同しかねない思想も、聞く者……ネバルにとっては影響力が強そうだった。彼女の身体は少なからず震え、早まる鼓動と呼吸を必死で抑えて、答えようとしている。
『君ならば、私の望む、そして乱世を生き残る最強の鴉になれる筈だ。決して悪いようにはしない。改めて依頼する……我々の仲間になってくれ!』
「断る」
『そうか。ならば、死ね』
直後、申し合わせたように三機のACが動き出した。リーダー機を除く三つの黒い影が、赤い目を輝かせながら《DJ》に襲い掛かったのだ。
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