A Pacifist

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「(どうして、どいつもこいつも……アイツ、アイツって……)」  その人物の事を脳内から振り払おうとしても、目の前のこの男同様、それは圧倒的にして儚げな空気を持って顕現してくる。存在そのものが印象に縛り付けられているような、無視することの決して出来ない、払えば払おうとするほど深く絡み付く棘のような、険しくも卑小な存在だ。感情がかき乱され、ガイアは思わず強い目でもって彼を睨む。砂嵐で汚れた表情には似つかわしくない、虚ろな瞳を彼は浮かべていた。 「……行くぞ、ネロ」 「は、はい!」  その男……《シグルズ・エルリック》からの許可を貰い、引き留めることを悔しげにやめたガイアを名残惜しげに眺めながら、ネロは自機に向かう。A.G.C.特殊装備班の一角を担う男の許可付きだ。十分に正規の命令として通じるのであり、その彼の歩みもよたよたと脱力気味でありながら、迷いがない。 「(ごめんよ、ガイア……だけど……)」  その少女から視線を逸らし、ネロは愛機たる紫の中二脚ACを見直す。シグルズの黒いACと並んでトレーラーに積まれたそれを見て、再び覇気を取り戻す。闇を払うように視線を向け、今から助けるべきその存在を脳内に描く。 「(今度は私が……待っててよ、“リリー”!!)」  トレーラーの荷台に上り、彼女は愛機のコクピットを開き、乗り込む。その機体の左肩には、“紫の百合”を象ったエンブレムが描かれていた……。 ──To be continued……
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