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『殺しはするなよ。徹底的に痛めつけ、“本物”かどうか見極めるのだ!』
先の宣告とは対照的な指示を、各機に向かってアーサーは飛ばす。彼自身は見守るが如くにその場を動かず、展開した三機のACが囲むようにして攻撃を開始する。
まずは正面から攻めるキルゴアの重二脚が両腕から熱弾を次々と吐き出した。それに続けて、横に飛び出したタンク《プラトゥーン》が二挺のキャノンを構える。砲口が鈍い輝きを放ち、《DJ》に狙いを定める。
「(ここは逃げるしか……!)」
直後、キャノンの鈍い発射音が響くのに合わせるように、《DJ》は二方向からのラッシュを飛び退いて回避した。ガトリングガンの弾幕が装甲を撫で回すようにヒットするが、一々入るノイズなど気にしてはいられない。片腕の愛機を振り回し、二連射される徹甲弾を回避する。
だがその退路を塞ぐように、ローレンツの軽逆関節機が《DJ》の頭上を飛び越えた。その腕部はHEATショットへと変形しており、コアから真っ直ぐに伸びた二つの砲身が眼下の獲物を捉える。頭上からの拡散発射。八発のHEAT弾が包み込むように襲い掛かる。
「うおおっ!!」
ネバルの唸りと共に、《DJ》は地を紫電の如く駆け抜け、弾幕を回避した。HEAT弾の炸裂と衝撃で地面がめくれ上がり、巨大な土煙が上がる。その陰をせめてもの隠れ蓑にと、ネバルは機体を突っ込ませ追ってくる機体を注視する。重二脚タイプ、《クライシス666》であり、両腕部の武装をハンガーへと回していた。
これは好機だと、ネバルは一瞬そう確信してペダルを踏み込んだ。このまま逃げることがかなわないなら、せめて一撃を食らわせ、隙を作る。右腕のショットガンを土煙の中で構えさせ、両手を上げる格好の《クライシス666》に対して機体を加速させた。
『ヒャハハッ!見え見えだ!』
しかし直後、ネバルの耳に挑発的な台詞と、ミサイルの点火音が響いてきた。土煙を越えた先で見えた《クライシス666》の肩から、六発の誘導弾が飛翔する。それらがプラズマミサイルだと判断した瞬間、ネバルは機体を急遽飛び退かせていた。
『どうしたぁ?もっと遊ぼうぜぇ!ビビってんじゃねぇぞぉ~~!?』
眼前で次々とプラズマの爆光が咲き乱れ、その力場が《DJ》の装甲を撫でる中、キルゴアはいかにも愉しげに声を上げていた。
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