Mercenaries

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「(こいつも……出来る!)」  しかしネバルは、プラズマの陰から飛んでくるレーザーとHEAT弾を回避しながら、苦々しい表情を浮かべていた。戦闘狂じみた挑発の言葉とは裏腹に、敵の戦い方はクレバーだ。それを重装甲の機体でやられては、まさしく取り入る隙がない。  だが悩む暇など敵は与えず、《マルチ・バース》が再び頭上から飛びかかるように接近する。黒い装甲に網目状のパターンが刻まれた、独特の姿がすぐ上にまで迫り、HEATショットを吐き出す。それをネバルはハイ・ブーストで回避するが、コンデンサの残量は既に三割もない。それを見据えたように、背後からもう一つの影は迫っていた。 「タンク!?しまった!」  後方へとブーストして逃れた《DJ》は、奥から迫っていた《プラトゥーン》へと、自ら近付くような格好になっていた。その両腕に構えられた大砲(AU07 Knocker)の砲口が妖しく光る。高威力を保ちつつも速射性に優れたキャノンであり、畳み掛けられれば、装甲の甘い《DJ》など赤子同然だろう。だが、回避するための電力など、コンデンサには残っていないのだ。  バック・モニターに映る砲口に、ネバルの目が見開かれ、発射の瞬間が鮮明に捉えられる。感覚がスローモーションの如く感じられ、脳裏に発射された砲弾が自身を貫くというイメージが描き出される。左腕の無い《DJ》のコアが抉られ、連撃により爆発四散してゆく。  左腕?  ネバルの頭に、そのイメージが新たに浮かび上がった。更に続けて、手足は無意識下の内に素早く動かされる。操縦桿のボタンはまるで早打ちの如く甲高い操作音を奏でられ、その間もネバルの目は後方の敵と弾丸を睨み付けていた。  直後、忠実なるマシンはその精緻な動きを受け、ほんの僅かに右方向に逸れながら、地面に接触させた右足を軸にターンしていた。両脚に増設された旋回補助ブースタが焼け付きそうな炎を上げ、フレームが軋んで悲鳴を上げる。だが発射された砲弾の一発目は、本来左腕部があるべき場所にまっすぐ飛び、そのままコアの装甲スレスレを通り過ぎていったのだ。  そのまま《DJ》は遠心力で仰け反りながらも高速ターンし、《プラトゥーン》の姿を正面に捉えていた。間髪入れず、二発目の砲弾が放たれる。だが、《DJ》は軸にした右足の膝をそのまま落とし、機体を右側に大きく傾けさせていた。砲弾はまたも、コアの左を掠めていく。
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