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「う……そだぁ」
うまく頭が働かない私が発した言葉は寄りによって、これ。
店にいる時とは違って、今度は正面から少しずつ距離を詰める坂崎に、体中がカッと熱を持つ。
「……嘘じゃないよ。
いい加減な気持ちでこんなこと言ったりしない」
なおも顔を近づけてくる坂崎から逃れようと後ずさるけど、すぐに背中がソファーの背もたれに届き、私は完全に逃げ場を失った。
「紺野の気持ち、教えて」
「私の……気持ち?」
いつかのように、坂崎は大事なものに触れるように、優しく私の頬に手を添える。
「……俺とキスするのは、嫌?」
あ、今度は私の頬に涙がひとすじ。
「嫌……じゃない。」
私は震える目蓋をそっと閉じた。
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