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「……とりあえず、何か飲む?」
私は目の前の、さっきまで各務さんが座っていた席にぶすくれて座る坂崎に聞いてみた。
いきなり来て、なんでこんなに不機嫌なの……?
ワケわかんない。
「酒はもういらない」
あっ……そ。
それなら一体何しに来たの? 安藤さんは?
聞きたいことは山ほどあるけど、ただならぬ雰囲気の坂崎を持て余して、私はとっく温くなったビールをごくりと一口飲んだ。
「ねえ、各務さんは?
坂崎、各務さんに会いに来たんじゃないの?」
私の問いに坂崎はさらに苦虫を噛み潰したような顔になる。
「悟なら、帰った」
「ええっ!? なんでっ?」
この店に私を誘ったのは各務さんなのに、私に黙って帰っちゃったの?
そんなの何だか各務さんらしくない。
「あんまり長居すると、スタッフが恐縮するからって。
……紺野、そんなに悟が帰ったのが残念?」
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