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シャワーをすませた坂崎に、私はまた心臓を鷲掴みにされた。
下ろした前髪に、黒いセルフレームの眼鏡。
初めて見るリラックスした坂崎の姿にどうしようもなく胸が高鳴る。
たぶん、会社の誰もが見たことのない坂崎の姿。
私だけが―――
……ん、眼鏡?
「あ、あれ? 坂崎目悪いんだっけ?」
「ああ、知らなかった?
普段はコンタクトだよ」
「……知らなかった。
というか、私たぶん知らないことだらけ、坂崎のこと」
眼鏡越しに私を見つめる坂崎の瞳はこの上なく優しい。
「いいじゃない、今から少しずつ知っていけば」
ーーまた坂崎の顔が近づいてきた。
あ、と思った時はもう遅く、二人の吐息が甘くまざりあう。
じわじわと身体中を満たしていく緩い熱に、私はしばし時を忘れた。
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