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「……紺野!!」
途端に、坂崎にぎゅうと抱き締められた。
私は坂崎の腕の中、愛しい香りに包まれる。
でも、すぐに冷静になると同時に、私はさっきから胸の片隅でくすぶっていた何かを思い出していた。
……それは、安藤さんのこと。
彼女のこと、ちゃんと坂崎に確かめなきゃ。
黙って見てみぬふりをするのは、ただの誤魔化しであって、美徳じゃない。
気になることは、はっきりさせなきゃ。
相手を疑い続けることは、結局は破綻を呼ぶ。
それは、私が過去の苦い経験から得た教訓だった。
「でも、付き合う前に一つだけ教えて欲しいの、安藤さんのこと……。
今の二人はどういう関係なの?」
「……ごめん、それは俺の方から話さなきゃいけないことだった」
坂崎は私を包んでいた腕をそっと外すと、私にソファーに腰かけるよう促した。
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