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「そんな顔するなよ。
俺は行かないよ」
坂崎は私の頭に右の掌をのせると、くしゃくしゃと私の髪をかき混ぜた。
「だ、だって、普通に考えたら、すごくいい話よね?
今よりももっと大きな仕事できるかもしれないし……」
「……まあ、そうかもな。
でも、俺は今の仕事気に入ってるし……。
それにうちの会社はこれから、でしょ?
桜屋は地元で一番のデパートとしてもう出来上がってる。
でも、うちは東京営業所にしろ、海外進出にしろ、今から俺たちが道を作っていけるだろ?
失敗することもあるかもしれないけど、俺は新しく開拓していく方に魅力を感じてるんだよ。
……それに、紺野もいるしね」
なんて言って、またいつものように坂崎はニヤリと笑う。
まるで、坂崎のその笑顔が合図のように、私の顔はカッと赤くなるんだ。
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