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「え? そこまでは聞いてない……」
「そっか……。
まあ、社長からしたら面白くないよな。
大事な一人娘が、自分のとこの一社員の息子と付き合ってるなんて」
坂崎は昔のことを思い出してるんだろう。
苦しげに歪む顔に、私の胸は軋んだ。
「親父さ……、たぶん俺が紗耶香と付き合ってたせいで、系列のスーパーに異動させられたんだ」
「そんな……、経営者が人事に私情を挟むなんて」
「ん、それが普通の感覚だよな。
でも、紗耶香の親父ってそういう奴なんだよ。
そんな社長の元で働きたいなんて、間違っても思うわけないだろ。
……これでわかった?」
と、そこで坂崎は深いため息を一つついた。
そうか、それで安藤さんのお父さんの話になった時、坂崎の態度がどこかぎこちなくなったんだ。
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