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「それでも、親父は俺のこと全然責めなかったし、最後まで紗耶香との交際に口を挟まなかったよ。
当時は、俺も周りが見えてなかったから、親父に甘えてた。
でも、自分も社会人になって必死に毎日働いてきて、目の前の仕事をいきなり取り上げられるってことがどういうことか、ようやくわかったんだ。
親父は桜屋での仕事を誇りに思っていたのに、俺のせいでそれを失った。
……俺は親父に対してずっと負い目を感じてる」
そう言って目を伏せる坂崎に、気がつけば私は手を伸ばしていた。
ソファーの上に膝立ちになり、私は坂崎をこの胸にかき抱く。
「坂崎、ごめん。そんなことまで話させて。
勝手に嫉妬して、私、ひどいこと言ってばっかり……」
私の腕の中で、坂崎がふっと息を漏らすのが聞こえた。
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