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「……色々あったんだ、本当に。
いい思い出もあるけど、そんなの全部なかったことにできるくらい、嫌な思いもたくさんした」
坂崎は私の腰に腕を回して、そっと顔をあげた。
「いつか、紺野のこと『恋愛に臆病になってる』って言ったけど……、それは俺の方だよ。
紗耶香とのことがあって、ずっと誰のことも好きにならないようにしてた」
初めて聞く坂崎の告白に胸が痛む。
坂崎がずっと私と似たような傷を抱えていたなんて。
私は今まで坂崎の何を見ていたんだろう?
これまでの自分の行いを、私は心底後悔した。
「それでも、紺野に出会って、自分でも紺野に惹かれていくのを止められなくて……。
ずっと怖かったんだ。
想いを口にして、それで紺野が俺から離れていったらどうしようって。
いつも口喧嘩ばかりでも、そんな関係を失いたくなかった。
例え、紺野が俺のものにならなくても」
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