第5章

14/68
前へ
/186ページ
次へ
   社長には、わたしの噂話は耳に入っていないみたいだ。 それがせめてもの救い。 無駄な心配は掛けたくないから。 と言っても。 毎日の嫌味や聞こえてくる陰口は、覚悟をしていてもわたしの神経をすり減らしていった。 食欲は無くなり、夜もあまり眠れなくなってしまった。 社長は、こんなわたしをマリッジブルーだと勘違いをしているみたいだった。 「大丈夫か?」 「すみません」 「……夜、部屋に行くよ」 「わかりました」 嬉しいような嬉しくないような、複雑な気持ちだった。 優しくされたら、甘えてしまう。弱い自分が出てきて、泣いてしまいそうだった。 そうすれば、もう誤魔化せなくなる……。
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4430人が本棚に入れています
本棚に追加