第5章

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   「亜矢……」 社長の甘い声。 わたしの名前を呼ぶと、抱きしめる社長の腕の力が強くなる。 まるで逃がさないと言っているみたい。 ああ、そうだ。 社長はわたしがマリッジブルーだと思っているんだった。 わたしは社長から逃げたりしないのに……。 誤解を解かなくちゃ。 だけど……。 社長の腕の中で溺れてしまいそう。 息が出来なくて苦しくなる。 「ッ、……苦しい」 そう言うと、ハッとしたように社長がわたしから離れる。 顔を上げて社長を見詰めると、その瞳が不安げに揺れていた。
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