第5章

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   指定されたレストランに香坂くんと一緒に向かう。 そのイタリアンレストランは、大通りから一本路地にはいったところにひっそりと佇んでいた。 レンガ造りの外観と可愛いあんこうの看板は、いかにも女性受けしそうだ。 ……でも。 送別会にしては、ちょっと予算オーバーじゃないのかな? 普通の居酒屋でも良かったのに。 そんなことを考えながら、ポツリと呟く。 「……ここのオーナーは、社長の知り合いだったよね」 「そうなんですか」 「うん。確か……」 「西森さん、どうして会社辞めるんですか?」 思い掛けない言葉に、驚いて香坂くんを仰ぎ見る。 「……知らないの?」 「何をです?」 キョトンとした表情の香坂くんは、本当に何も知らないみたいだ。
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