第5章

27/68
前へ
/186ページ
次へ
  「……まだ先なんだけど、結婚するの」 「そうなんですか。おめでとうございます」 「ありがとう」 香坂くんに、ニコリと微笑んで、それから店内に入る。 一身上の都合とは退職の理由によく使う言葉だ。 だから、それがイコール寿退職に繋がらなくても仕方がない。 だけど……。 わたしの良くない噂が社内に広まっていると思っていたのは、わたしの思い込みだったのだろうか。 まぁ、香坂くんはそう言ったことに興味が無さそうだから、女子社員のわたしに対する態度にも気がつかなかっただけかもしれないけれど。 「予約をしていました――」 店員さんに社名を告げると、二階に案内された。 どうやら二階を貸切にしているらしい。
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4432人が本棚に入れています
本棚に追加