第5章

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   気を遣って話し掛けてくれてるのかな? 確かに香坂くんと二人きりだと、何を話題にしていいのか、ちょっと困ってしまう。 よくよく考えたら、仕事以外の会話を今日まで一度もしたことがなかったのだ。 隣の席の香坂くんをチラリと盗み見る。 すっきりとした顔立ちの香坂くん。 よく見ると美形なんだなと、今更気付いたりして。 「僕の顔に何かついてます?」 「……香坂くんって、睫毛長いよね」 「……は?」 「ごめん。なんでもない」 香坂くんは、困ると口がへの字になるみたいだ。 他愛のないことをポツリポツリと話しているうちに、一人また一人と現れて。 七時少し前には、女性社員も含め、全員が席についていた。
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