第5章

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   「西森さん、ちょっと飲むペースが早くないですか?」 「え?……そ、そう?」 香坂くんに話し掛けられて、持ち上げたワイングラスをテーブルに戻す。 わたしのことなんて気にしてないと思っていたのに、しっかりチェックされていたようだ。 「主役だから、好きなだけ飲んで頂いて構いませんけど。……その、大丈夫ですか?」 「……うん。大丈夫……」 目を伏せて、小さく溜め息を吐く。 今日が最後なんだから、しっかりしなきゃ。 いつかみたいに酔っ払って迷惑を掛けたら、また何を言われるかわかったもんじゃない。 社長と真央ちゃんの様子は気になるけど、別に心配することじゃない。 そう言い聞かせて、顔を上げる。 すると、綺麗に盛り付けされた小皿がわたしの目の前に置かれていた。
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