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「は?」
まじまじと伊原の顔を見詰めた。
「食事に行かない?」
「それは仕事でしょうか?」
「シェフを口説きたくてね。その下見に。一人じゃ怪しいだろう?」
「残業手当を頂けるならお供します」
そう言うと伊原は「決まりだな」と一度微笑んで、パソコンの電源を落とした。
伊原とイタリアンレストランに来てはみたものの、本当に下見なのか疑問だった。
何故ならこのレストランのシェフは一人きり。
口説くと言うことは店を閉めると言うことだ。
こじんまりとしていて、そこそこ流行っている店を閉めるなんて考えられない。
「社長、嘘つきましたね」
「あ、バレた?
これ、ワインリスト。好きなの選んで」
伊原は極上の笑みを浮かべて、わたしにワインリストを手渡した。
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